お盆休みで家族サービスに明け暮れていたオッサンは、阿部慎之助の2000本安打を生で見ることは出来なかった。
偉業達成から数日後と言う間の抜けたタイミングになってしまったが、我らが慎之助の偉業は語らずにはいられない。
偉大なる阿部慎之助
キャッチャーで2000本安打
プロのキャッチャーと言う職業は激務過ぎる。
毎日150球近いプロのボールを捕り続け、打者の弱点や状況から投手をリードし、ランナーが塁を盗みに行けばそれを阻止し、内野ゴロが転がるたびにカバーに走る。
時には150キロからさらに加速されたファールチップが身体を直撃する。
手の長いバッターだとバットで後頭部を殴られる事もある。
毎回毎回重たい防具をつけて中腰で構え続けなければならない。
なんて因果な商売だ。
こんな特殊な職業をしているというのに、打撃まで期待される。
これまで阿部慎之助を含めてNPB2000本安打達成者は49人もいる。
その中でキャッチャーで2000本安打を達成した選手は、野村克也、古田敦也、谷繁元信の3人しかいないのだ。
そして阿部慎之助は、晴れて4人目のキャッチャーでの偉業達成者の仲間入りを果たした。
ここ数年キャッチャーなんてやってないじゃん!という突っ込みもあるとは思うが、15年以上巨人の正捕手を勤め続けてきたんだから、キャッチャーでの達成者と言っても誰も異論はないだろう。
闇に隠れた大記録
しかしそんな偉大な記録が達成されたというのに、世間の評価は芳しくない。
お盆休みの最大のスポーツビッグイベントは、全米プロゴルフ選手権。
日本の松山英樹、ついに日本人初のメジャー制覇達成なるか?という話題が朝晩のニュースで溢れ帰り、世のオジサン達を心地よい睡眠不足に誘ってくれた。
そんな日本中の期待を背負った松山英樹だが、今回も悲願達成はならなかった。インタビューで思わず苦やし泣きする姿に、オジサンだけじゃなくゴルフにそれほど興味の無い若い人達も感動させられたのではないだろうか?
そしてそんな興奮も覚めやらぬ中、また一つビッグニュースが飛び込んでくる。
神の左を持つ男WBCバンタム級チャンピオン山中慎介が、具志堅用高の持つ13連続防衛という日本記録達成を目前にして、まさかのKO負け。王座陥落となってしまった。これも日本中が涙する形となってしまった。
え?マジで?
ゴルフって今時プレイヤーが減少し、オジサンしかやらないスポーツになっちゃってるのにメジャーそして松山となると話題沸騰しちゃうの?
ボクシングだって現在日本人の世界王者が何人いるか?も知らないだろうに山中だと大騒ぎになっちゃうの?
巨人の阿部慎之助が2000本安打達成!というビッグニュースなのに、ゴルフとボクシングに話題持って行かれちゃうの?
・・・行かれちゃうんだよ。
それほど日本のプロ野球ってマイナーな日本限定のローカルのスポーツになってしまってるんだ。
でも仕方ない。今年の巨人が弱すぎるのも悪いんだ。
せっかくの偉業達成日も最早お得意様にされている首位広島カープに全く歯が立たず、ほぼ勝負の決まった9回にひっそりと記録達成。
優勝争いの緊張感とか、起死回生の一発とか、そんなん全部関係ない負け試合、しかも完全アウェーでの達成。
さらに200勝投手は去年広島の黒田が日米通産で達成して26人目。でも2000本安打は49人目。
これで盛り上がれという方が無理があるよな。。。
これからのキャッチャー
盛り上がらないのは仕方ないけど、阿部慎之助がどれかで凄いかは今のキャッチャー陣を見ればよくわかる。
WBCで覚醒したと思われた巨人の小林誠司は、予想を気持ちいいくらいに裏切り現在打率は1割台。
安全な8番打者として他球団に大きな安心を与え続けている。
他球団に目を向け、ここ数年キャッチャーとしてれレギュラーに定着している選手と言えば、楽天の嶋基宏と西武炭谷銀仁郎くらいだろう。
楽天の嶋は今在籍しているNPBのキャッチャーで数少ない打てる捕手だが、現時点で786安打。年齢は既に32歳だ。
逆に炭谷銀仁郎は守備の人。打撃は全くからっきしだが守備なら誰にも負けない。なので炭谷のヒット数は554安打。まだ30歳だけど10年でヒットは500本。2000本打つには40年かかる。
打てるキャッチャーがいなくなってしまった今、阿部慎之助に続く2000本安打を達成する選手が出てくるまで間違いなく20年以上はかかるだろう。
そりゃそうだ。野村克也から次の2000本達成は古田までかかったんだから同じくらいの時間はかかるだろう。
打てるキャッチャー阿部慎之助というのは、それだけ球史に名を残す偉大なプレイヤーだと言うことだ。
これからの阿部慎之助
さて巨人ファンとして気になるのは、阿部慎之助のこれからだ。
ぶっちゃけ4番ファーストとしては、ハッキリ言って物足りなさすぎる。
打率2割5分、ホームラン14本では、他球団に脅威を与える4番にはなり得ない。
それは本人も自覚していることだろう。
阿部自身のコメントでは、2000本は通過点。2500本までやりたいという熱意もあるようだが、そこまでモチベーションは続くのだろうか?
全盛期とは程遠い成績。ファーストしか守れない身体。全力疾走もままならない。ランナーとしては野球盤状態。
三冠を争った2012年くらい打ってくれるのならファーストでもいいが、もうその姿を期待するのはコク過ぎる。
本人もそろそろ自分はレギュラーとしては身を引き、若手を育成する場を与えたいという気持ちはあるのかもしれない。
2000本という節目を終えた事で、阿部自身もチームも大きな決断をする時なのかもしれない。
2000本安打を早く打って欲しい。でも2000本打った事で阿部慎之助という1つの時代が終わってしまう。それないつまでも2000本なんて打たないで欲しい。
そんないろんな思いが渦巻いていた阿部慎之助の2000本安打。
スゲーのに寂しい。こんな思いで迎える2000本安打は二度と訪れないだろう。