悪夢の13連勝が終わり、ようやく一息ついたかと思えば、またも新たに始まる連敗街道。
序盤に先制され、3点差以上離れたらもうギブアップ。
ひっくり返す打力はない。3点差を守りきるブルペンもない。もう巨人には上位を争う気力も体力も残されていないのだろうか?
そしてそんなジャイアンツを奈落の底に突き落としたのは、かつてのチームメイト。しかもドラフト1位で入団したエリート達だった。
あのドラフト1位は今?
村田と大田
交流戦の3戦目、1勝1敗で迎えた北海道日本ハムファイターズの先発は村田透。
2007年の大学社会人ドラフト1位で巨人に在籍していた投手。
即戦力と期待された右腕は、巨人では全く日の目を浴びること無くわずか3年で戦力外通告を受ける。
その後不屈の闘志で海を渡りアメリカで勝負した男は、たった1試合だけだったがメジャーという頂きまで登りつめた。
そして逆輸入選手として日本ハムと契約。そして巨人戦でプロ初勝利をマークすることとなった。
大田泰示は言うまでもない2008年のドラフト1位。
8年間巨人に在籍し、その期間で放ったホームランはわずかに9本。
そんな男が強烈な恩返しを古巣に見せつける。巨人戦10打数7安打。ホームラン2本。これで今シーズンのホームランは8本。
遅咲きの大砲が古巣巨人の息の根を止めた。
巨人では全くいいところのなかった二人が、移籍した球団で大きな花を咲かせようとしている。
見捨てなければ良かったのか?
3年ほど前の話だ。
なんだか身にもならないようなお決まりの定例会議を終え、東京駅すぐ横の大きなタワーから出て、日本橋方面へと足を進めた。
信号が赤から青へと代わり、交差点を渡ろうとしたところ、一台の高級外車の窓が開き、けたたましくクラクションをならしはじめた。
え?オレ何しちゃったんだ?高級外車にツバかけたわけでもねーし、メンチ切った訳でもね~し、やべー何しちゃっただよ?
いやそもそもオレじゃなくて他の人にクレームつけてるのか?と不安に胸を踊らせていると、高級外車から一人の男が降りてきた。
おーい!久しぶりぃ~~!!
え?誰?あっお前は・・・そうその男は、かつての同僚だったのだ。
その男は、数年前会社に嫌気がさしたと言い出し、引き止める同僚の制止を振り切り会社を辞めてしまった。
その後、風の噂で数人の仲間と独立したとは聞いていたが、多分上手く言ってないだろう。そう簡単に会社を辞めて上手くいくはず無いんだ。世の中そんな甘くない。そんな希望的観測、他人の不幸を期待する意地汚い心から、オレは彼との連絡を拒否していた。
そんな男とまさかこんなところで出会うとは・・・しかもあいつは高級外車に乗っている。
いろいろ大変なことはあったんだろう。苦労したこともあったんだろう。だが今あいつは成功をおさめた。数少ない勝ち組へと登りつめたんだ。
己の保身ばかりを考え、会社にしがみついた負け犬のオレは彼の目を真っ直ぐみることは出来なかった。
村田透、大田泰示。かつての巨人のドラフト1位。当然期待していた。大きく成長して欲しかった。だが巨人では芽が出なかった。
巨人で芽の出なかった選手が他のチームで大成するはずない。所詮その程度の選手だから巨人でも活躍出来なかったんだ。そう思いたい汚い気持ちは残念ながら心のどこかにある。
だけど彼らは成功を掴み取ろうとしている。巨人というしがらみを振り払い、大きく羽ばたこうとしている。
失ったものはデカすぎる。今さら気付いてももう遅すぎるんだ。