チキショー!もう少しだったのに!あと1万円、いやあと1000円あればなんとかなるのに。
お客様もうこの辺でやめておいた方がよろしいかと。
待ってくれ!もうちょっとだけやらしてくれ!あと1000円ぶっこめば大当たりが来るんだ!いま金を用意してくるからもうちょっとだけ待ってくれ。
お客様、当店はキャッシュの無いお客様はご遠慮頂いております。どうぞ本日はお引き取り下さい。
待ってくれ!後もう少しなんだよ。。。
プロ野球はギャンブルだ
ギャンブルに勝つために
黙示録カイジ風なオープニングになったが、プロ野球の世界は壮大なるギャンブル場だ。
誰しもに均等にチャンスが与えられる訳ではない。高校、大学、社会人で実績を上げてきたドラ1と呼ばれる選手達は、契約金という高額な軍資金を手に入れ賭場に入ることが許される。
豊富な軍資金を手に入れたドラ1達は、優先的にベットの機会が与えられる。
1回負けてももう1回。2回くらい負けてもまだ大丈夫。10回くらい負けたってまだへっちゃら。だが、20回、100回と負け続けると流石に蓄えていたはずの軍資金は徐々に寂しくなってくる。
ついに手元の軍資金を使い果たした時、新たな軍資金を手に入れるためにドラ1でも他球団に売り払われてしまう。それでもまだ他球団で買ってくれるだけまだマシだ。全てを使い果たした選手達の多くは、小額の資金を手に入れるため必死にトライアウトに参加するが、夢半ばで敗れてしまう。
プロ野球というギャンブルに負けた戦士達は、現実というとてつもない高い壁にようやく気が付き、普通の日常を手に入れるためネクタイを締める日々を始める。
今、華やかなライトを浴びながらグランドで野球という球遊びに興じることが出来る人達は、野球というギャンブルを見事に勝ち上がった数少ない勝ち組達なのだ。
中井大介の時間
プロ10年目。親愛なる相方大田泰示を失った中井大介は、キャンプで一切光を浴びることは無かった。
そりゃそうだ。期待の若手と言われ続け、気がついたらもう今年で10年目。
中井大介がレギュラーを争う場は最早セカンドしか残されていない。なのにそのセカンドという1つの台に群がるハエどもの多いこと多いこと。
クルーズ、片岡、吉川、辻、立岡、重信、藤村、脇谷などなどなど。
もうイイや。結局オレなんかこんなもんだよ。もう10年目だ。そろそろ夢見る生活から足を洗い、サラリーマンにでもなって地に足をつけて働くか。。
でもちょっと待て。ポケットにまだ最後の1万円が残ってるじゃないか。最後に残された1万円。これでせめてラスト勝負に出て見るか。やらずに諦めるのはもったいないからな。
そしてオープン戦、中井大介の1万円は見事な大当たりを引き当てた。3連チャン、いや10連チャン。信じられないビッグチャンスを引き当てた中井大介は、開幕スタメンという大当たりを勝ち取った。
いける。これで行ける。また大きな勝負を出来る場所を与えられたんだ。最後のチャンス、これだけは絶対に逃してなるものか。
しかし、開幕から36試合を終えた今、残念ながら中井大介の軍資金はまたもや底をついてしまった。
打率225、ホームラン3本、なんと得点圏打率は087。打つ方は・・・でも守れれば、と言いたいとこだが守備の方がもっと酷い。
打てない。守れない。もう若くもない。残念ながら10年目の大勝負も中井大介は勝つことが出来なかった。もう我慢も限界だよ。もうこれ以上勝負の場に立たせることは出来ないよ。
ハッキリ言って完全にリミットは振り切っている。スッテンテンだ。
中井大介まだポケットに残っているか?小銭でもいい残っているか?
残っているんなら最後の最後もう一度だけ。泣きの1本勝負に賭けてみろ!もう本当に崖っぷち。振り返る場所すら残されていないのさ。