坂本勇人の覚醒ぶりがハンパ無い。
打率は一時4割台をキープし大当たりだった中日大島を豪快に抜き去り、一人異次元の3割8分台でぶっち切りのトップ。
少なかったホームランも量産体制に入り、エルドレッドに2本差の6本。
打点は同僚阿部にトップは譲っているが、20打点で射程範囲に入っている。
昨年の首位打者はもうタイトル1つだけじゃ物足りない。目指す頂点は日本人史上5人目になる三冠王だ。
坂本勇人は三冠王を穫れるのか?
恐るべき進化
5月10日の阪神戦。巨人は坂本、阿部、マギーがクリーンアップ揃い踏みのホームランを放ち、不調に喘いでいた長野も続いた。
この日、仕事に追われていたオレは、試合の結果をほとんど確認することができず、全選手のホームランはスポーツニュースで初めて見ることが出来た。
阿部のホームラン。う~んあのインハイをスタンドに運べる技術力は阿部ならではなだなぁ。
マギーのホームラン。ちょっと体勢を崩されながらもグッと我慢してレフトスタンドへ放り込んだ。かなり調子が良さそうだなぁ。
長野のホームラン。まぁ長野らしい当たりなんだが、まだまだ本調子には程遠いよなぁ。
と、三者三様のホームランだったのだが、坂本の2発はマジで度肝を抜かれてしまった。
坂本と言えば、天才的なインコースの捌きが特徴の選手。そもそもボールを投げる以外は左利きの坂本勇人。そのため窮屈になる左肘を利き腕の利点を活かし巧みに操りインコースを支配する。それが今までの坂本勇人だ。
当然坂本勇人のホームランと言えば、大抵レフトスタンド、いってもバックスクリーン。
それが5号ホームラン、6号ホームランとも右方向への豪快なアーチ。インコースの天才が、ついに右方向へも大きい当たりを打てるように進化してしまった。こうなるともう手のつけようがない。
伸び悩んだ日々
高卒2年目でレギュラーに定着し、3年目には打率3割。4年目にはホームラン30本台。6年目には最多安打のタイトルを獲得。
傍目に見れば順風満帆。特にドラフトで競合して堂上の選択権を獲得した中日ファンからすれば、外れ1位の坂本勇人の成長ぶりは羨ましい限りだろう。
だが首位打者を獲得する昨年までの2~3年の坂本の姿からは、今の姿は想像すらできなかった。
ものまねタレントの「さかとも」が演じるやる気のない三振。あれが坂本の代名詞。確かに坂本は素晴らしい選手ではあるが、所詮打率2割5分程度。ホームランも10本程度。守備でもゴールデングローブ賞には届かない。そんなまぁまぁの選手で終わってしまうんじゃないか?坂本本人も巨人ファンもやきもきしていた時期を乗り越えてきて今がある。
最多安打のタイトルを獲得した翌年、坂本は同僚長野の右打ちの技術を取り入れ、さらなる打率の向上を謀った。しかし、結果右打ちを追い求めすぎてしまい、最大の特徴であるインコースの強さがスポイルされてしまった。
右打ちを心がけりゃインコースが打てない。でもいつも通りインコースしか打てないんじゃ打率は上がらない。どうすりゃいいんだよ。という葛藤を乗り越えてついに首位打者というビッグタイトルに辿り着いた。
そしてWBCでは繋ぎのバッティングに徹することにより、気がつけばセンターから右への意識が根付き、自然と右打ちの技術まで向上してしまった。
前半戦不調にあえぐWBC組を尻目に一人悠然と泳ぎ回る坂本勇人の姿は、ちょっとやる気がなさそうな「さかとも」のモノマネの姿からは想像すらできない域にまで達している。
もはや達人レベル。今の坂本勇人は全盛期の落合博満レベルにまで近付きつつある。